「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をよく耳にしますが、高価なITシステムを導入することだけが正解ではありません。
私は38年間、機械設計や生産管理の現場で働いてきました。その経験から言えるのは、中小製造業にとって本当に必要なのは、派手なシステムではなく、**「現場で何が起きているかを正しく数字でつかむこと(見える化)」**です。
今回は、パッケージソフトに頼りすぎず、自分たちで少しずつ改善を進める「手作りのDX」についてお話しします。
1. 「見える化」がなぜ重要なのか
製造現場では、毎日さまざまな問題が起こります。 「なぜかこの工程で時間がかかる」「仕掛品がたまっている」といった悩みは多いですが、その原因を「なんとなく」で判断していませんか?
- 数字で判断する: 作業時間を計測し、データとして残すことで、どこに本当のボトルネック(停滞)があるのかがはっきりします。
- 全員で共有する: 社長も現場の社員も、同じ数字を見ることで、「次はここを直そう」という共通の目標が持てます。
2. 高価なソフトが失敗しやすい理由
「既製品の管理ソフトを入れたけれど、結局使わなくなった」という話をよく聞きます。それには理由があります。
- 自社のやり方に合わない: 既製品のソフトは、自社の細かいルールや現場の動線に合わないことが多く、逆に入力の手間が増えてしまいます。
- 直したくても直せない: ちょっとした変更をしたいだけでも、ソフト会社に見積もりを取って依頼しなければならず、時間もお金もかかります。
これでは、日々の改善スピードに追いつけません。
3. 「自分たちで作る」という選択肢
そこで私が提案しているのが、Python(パイソン)などのプログラミングを活用した、自社専用のツール作りです。
私は今、60歳を過ぎてからPythonを学び、アプリ開発に取り組んでいます。なぜなら、現場の苦労と経営の両方がわかる人間が作るツールこそが、一番使いやすいと確信しているからです。
- 必要な機能だけを作る: 最初から大きなシステムは作りません。「まずは稼働率だけ記録する」といった小さなアプリから始めます。
- すぐに修正できる: 現場から「使いにくい」という声があれば、その場ですぐにプログラムを書き換えて改良できます。
- コストを抑える: 高額なライセンス料を払う必要はありません。自分たちの知恵を形にするので、作った分だけ会社の無形資産になり、コストも大幅に低減させることができます。
4. DXを成功させるための進め方
- 社長が目的を伝える: 「社員の仕事を楽にするために、まずは現状を数字で見えるようにしたい」など、目的をはっきり伝えます。
- 現場の「困りごと」を聞く: 「毎日この集計をするのが面倒だ」というような、小さな不満をデジタルで解決することから始めます。
- 少しずつ広げる: 最初から100点を目指さず、50点のツールでもいいので使い始め、現場と一緒に育てていきます。
5. まとめ
DXとは、決して難しいことではありません。 「今の仕事をもっと楽に、もっと正確にするために、デジタルという道具を自分たちなりに使ってみる」ということ。
社長が旗を振り、現場が知恵を出し、それを形にする伴走者がいる。この形が整えば、中小製造業はもっと強く、もっと面白い場所になります。
まずは、身近な「紙の記録」をデジタルに変える一歩から、一緒に始めていきましょう。